真夜中のシ役所

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「うーん…むしろ、お盆(・・)とかお彼岸(・・・)の方が忙しいかな? ま、いつでも新しいシミン(・・・)は出てくるから、それほど季節選ばないんだけどね……あ、いや、季節の変わり目はやっぱりいつもより多いかな……?」  だが、職員課のおじさんはなんだか妙なことを言い始める。 「お盆とお彼岸? え、お休みでみんな出かけたりするし、むしろあんまり来ないような……それに、わたし達職員も大概お休みとってるんじゃないんですか?」 「いや、〝シミン課〟は別だよ。お盆とお彼岸休んでちゃ仕事にならないからね。ああ、それから勤務時間だけど、他と違って夜の11時半から朝の7時15分までになるから、間違って普通に日中出勤しないようにね」  それどころか、小首を傾げて疑問を呈するわたしを他所に、彼はますますもって訳のわからないことをさも当然というように話してくれる。 「11時半…って、真夜中じゃないですか!? え、六波羅市の市民課って、真夜中もやってるんですか? っていうより、もしかして昼夜交代制の24時間営業?」 「……ん? ああ、ごめんごめん。誤解させちゃったね。君の配属されるのは市民課じゃなくて()民課。市内で〝亡くなられた方達〟の行政手続きを行うところだよ」  そのありえない勤務時間に思わず驚きの声を上げる私に対し、職員課のおじさんはおかしそうに屈託のない笑顔を無責任に浮かべ、実にさらっと、ものスゴくとんでもない情報を口走ってくれた――。
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