真夜中のシ役所

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 そして、昼間の市民課や他の課でも同様に困っていることと思うのだが……一番厄介なのがDQNなことを言ってくるクレーマーだ。 「――このわしが死ぬなんておかしいだろ? これは何かの間違いだ! あんた達、わしらの税金で飯食ってんだからなんとかしろ! 上にかけあって生き返らすとかどうにかできないのか!?」 「いやあ、おかしいと言われましても、あなたの場合、かなりのご高齢な上に病気を患われていましたし、これはなんら疑う余地もない、老衰と病気によるごくごく一般的な自然死です。それに、もう亡くなられて火葬もすんでいることですし、ここは運命を素直に受け入れて、さ、閻魔王庁へ向かいましょう?」  (よわい)90にもなるというのにまだまだ生への執着甚だしく、ぜったい死ぬのは嫌だと駄々を捏ねる頑固で人を見下したような態度の老人に、わたしは眉をしかめながらも、やはり公務員として丁寧な説明によるご理解とご協力を(こいねが)う。 「閻魔王庁へ行けだと? 誰にものを言うとる! わしは大会社の会長だぞ? そうだ! 金ならいくらでも用意する! あんたにも後でそれなりの礼はするから、それでなんとかしてくれ。わしなんかより、もっと死んでもいいような役に立たない輩がおるだろ? そいつの命と交換に、わしの死亡を撤回してくれるよう、閻魔王にでもなんでも頼んでくれ!」  だが、それでもあまりに身勝手なことをいうDQNなその老人に、ついにわたしも堪忍袋の緒が切れた。 「あのですね、それ、〝贈収賄〟って言うんですよ? それに〝死〟は誰の上にも平等に訪れるものです。なのに、生き返ることも含め、そんな自然の法則に逆らうようなことをするのは極刑に値する大罪です! これ以上、そういう無理難題を要求するようでしたら、それこそ天への反逆罪で地獄行きになりますよ?」 「じ、地獄!? ……そ、それは……し、仕方ない。納得いかんが閻魔王庁行くんで、今の話はなかったことに……」  さすがに〝地獄〟という脅し文句が効いたらしく、老人は急にトーンダウンすると、おとなしく鬼籍登録申請書に必要事項を記入し始める。
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