こんなに近くに

2/2
前へ
/2ページ
次へ
今でも思い出す。眠れない時は、無理して眠らずに散歩をしていた。私の実家はのどかなところで、こっそり外出しても誰も気づかないのだ。今年は暑いと言われているが、風にのった木々の香りが心地よい。用水路に映った月を覗きこむ。私が歩くばついてくる月。あんなに届かないところにある月が、今だけは、ひとりじめできる嬉しい時間。懐かしいあの景色。行けるのなら行きたいけれど、もう戻れない。今はない私の故郷。
/2ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加