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僕はどうすればいいのか。
頭が猛烈に熱くなるのを感じる。
奴らを押しのけてでもここから出ていくべきか。
いや、今のところ顔たちは僕を襲ってくるわけではない。
それにしても鍵を閉めておいてよかった。
そんなことは今どうでもいいだろう。
あいつらはなんだ。
わからない。
自問自答を繰り返すがもちろん答えは出ない。
脳内の僕のうちの一人が、「窓から逃げろ」と言った。
その言葉に縋り付き、僕はもつれる足をどうにか動かし、無我夢中で、外と繋がる窓を隠している白いブラインドを開けた。
景色は白のまま変わらなかった。
外界と繋がる窓さえも、顔に埋め尽くされていた。
僕の姿を見た顔は、一斉に顔を動かし始めた。
声にならない声を上げ、尻餅をついてしまった。
全て、妄想であってほしい。夢であってほしい。
これは現実なのか、その判断も僕にはできない。
ちょうど、耳から流れてくるラジオが終わりを告げた。
停止した音楽プレイヤーに手を伸ばすこともできない。
すると、僕の背中を向いている方から、イヤホン越しに声と音が聞こえた。
声は聞き取れない、小刻みに小さく無機質な音が聞こえる。
脳内が恐怖で満たされている僕は、音の聞こえる方向に振り返った。
視線の先にある扉の横の壁から、白い顔が、立体的に浮き出てくるのが見えた。浮き出た顔は、僕の方を見つめたまま、壁から実験室に侵入しようとしている。
息もまともに吸えなくなった私は、腰に力が入らなくなり、視線が勝手に天井の方へ向いた。
天井からも、数えきれないほどの白い顔が、私の顔を見ていた。
その瞬間、僕の脳の処理能力は限界を迎え、意識を手放したのだった。
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