AM 3:25

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AM 3:25

外と繋がる窓に背を向けて、ゴウゴウゴウ、と動く装置の横で、黙々と実験の準備を行う。 赤と白の被覆を剥がし、先端の金属線をはんだづけする。 リスナーの投稿にコメントをするパーソナリティの言葉を聞きながら、私はいつも単調な作業をする。 言葉はしばしば私の頬を緩ませてしまい、入り口側のドアにつけられた小さいガラス窓から見えてしまうことを防ぐために、口元を手で覆っていた。 今日は廊下を歩く人がいないため、口元を無理に塞ぐ必要はなかった。 今考えると、その、ドアに備え付けられたガラスに、布でも貼り付けて、外を見えないようにしておけばよかったのかもしれない。 温度の測定のために、茶色の被覆が剥がされ、飛び出した赤と白の線を装置に黙々とつけて、ネジを閉める。 逆側のはんだで繋いだ金属線を試験体に接着する。 2年くらい同じこの単調な作業を行っていたが、なんとかラジオの音声で退屈をしのいでいた。 ふとスマートフォンで時間を確認すると、3時を過ぎている。 この日は研究室のゼミ発表があり、いつもより作業の開始時間が遅くなっていた。 しかも私は発表者で私は発表者であったため、前日はパワーポイントの資料作成に追われて、満足に寝ていなかった。 こんな時間になっていたのか、眠たい目を擦りながら、思考を止めつつある頭が独り言を言っていた。 ゴウゴウゴウとうなり続ける実験装置の音をかき消すように、私は耳から流れてくる音量を上げた。 あくびをしながら大量の線が接続された機械を操作し、設定を変えていると、リスナーの自虐ネタでパーソナリティが爆笑した。 その笑いにつられて私も声を出して笑ってしまった。 しまった、と思い、廊下と実験室を繋げている、ドアに取り付けられた窓をちらっと見て、通行人がいるか確認した。
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