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流石に、もう眠い。
長い長い話の後、私がやっと納得いったのを見て取った母は、大欠伸をしながら使ったグラスを洗ってからノロノロと寝室に向かう。
私は遠ざかる母の背に、慌てて声を掛けた。
「ねえ、ママ。このブレスレットに足されたっていう新しい石なんだけど、貰っていいかしら?」
「足したものも含めて返すって言ったけど、貰うことにこだわっているのなら、どうぞ。貴方にあげるわ」
「ありがとう!」
今度こそ落とさないよう慎重に掌にブレスレットを包み、簡単に口を濯いでから母の後に続いて自室へと戻る。
今も視界に入る真夜中の廊下も暗がりの部屋も、やっぱり好きにはなれない。
でも、この、もの静かで薄暗い、日頃とは違う雰囲気の空間にいたからこそ、母と腹を割って話せたのではないだろうか。
暗い廊下を渡りながら考えるのは、母から渡されたブレスレットのこと。
このブレスレットを細かく分けて、更にパーツを足して、家族お揃いのアクセサリーを作ろうと思いついたのだ。
"お星さま"と呼んでいたものは、両親に渡すアクセサリーに使う。
今度こそ、私が健やかであることの喜びと感謝を込めて、私がこの世に存在することを望んでくれた二人に贈りたいから。
母が新たに足してくれたものは、私と弟のアクセサリーに使わせて貰おう。
朔の夜は憂鬱。
でも、長年、私を憂鬱にさせていた呪いからやっと解き放たれたのだから、これからは少しだけ、朔の夜を好きになれるのかもしれない。
どんなに暗い夜だって、私や家族を見守り、導いてくれる星が、常に変わらず輝いているのだろうから、きっと大丈夫。
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