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いつのまにか空には薄く雲がかかり、時計がわりの月は、わずかに隠れ始めていた。
それを見て僕は、慌てて待ち合わせ場所まで舞い上がった。
五軒隣の、そのまた斜め後ろの家の屋根の上。僕がたどり着くと、すでにきていたミィが、ひとり夜空を見上げていた。
「ごめん! ちょっと月が見えにくくて……」
つまらない言い訳をする僕に目もくれず、ミィは夜空をじっと見つめている。今日は雲も出ていて星はあまり見えないのに、ミィは何を見ているんだろう。
聞くに聞けず、ただぼうっとかたわらでミィを見守っている僕に、ミィはふわりと柔らかい色を見せた。
「月に雲がかかって、きれいなのよ」
言われて見上げると、確かに月は上質な和紙を重ねたようにやさしく、美しかった。こっそりとミィの横顔を覗き見ていると、僕のからだが、月よりも明るくひかった。
ミィはそんな僕の様子に気がついたのか、少し恥ずかしそうな色を見せたあと、照れかくしにニャアと宿主のまねをした。
夜は長い。
真夜中真昼の僕らのデートは、これからだ。
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