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僕らは、実体を持たない。
宿主(僕は全体の方と呼んでいる)のたましいの切れ端のような存在で、夜夜中になると起きてきて、それぞれ自由に活動をしている。
基本的に全体の方には見えないけれど、たまに見えるやつもいるらしく、気にしないやつは気にしないものの、僕は全体の方に見つからないよう用心していた。
僕らは全体のたましいの切れ端だけど、それはたましいだけの話で、存在は全くの別個体だ。なのに彼らにかかればなんでも自分たち中心の解釈になるものだから、やれ多重人格だ幽体離脱だと、的はずれなことを騒ぎ立てる。僕はそんなのはごめんだった。
僕が外に出て少し経つと、住宅街にはあちこちから仲間たちが出てきて、途端に賑やかになった。
ふわふわと坂の上へ向かうお隣の家の子はまだ小さいから、これから学校だろう。毎日墓地の前で、青空教室が開かれるのだ。
お向かいさんのアニンとマイは、これからデートらしい。本体が同じ家にいると待ち合わせも必要なくて、羨ましいことこの上ない。
眺めていると、こちらに気がついたらしいマイがかわいい色にぴかぴかと光って、僕へあいさつをしてくれた。
アニンとマイの全体のたましいは、双子の兄妹だ。だから家も一緒だし、部屋は隣同士らしい。そんなことも僕らには、問題のないことだった。
全体の方と違って、僕らたましいには制約がない。血の繋がりや性差、歳の差、種別の差。ありとあらゆる縛りに、とらわれる必要がなかった。
惹かれ合う波長に寄り添って、たましいを燃やす。より強くひかる。それが僕らの生き方だった。
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