ありったけの憎しみ

「この街では誰もが駒のように動かされて働く」
貴方は私に物語る。
ナイト、クイーン、キング。
その手はチェスの駒を指差す。
夜の綺麗な街、貴方は幸せ？
この手は貴方を指差す。
夜の綺麗な街、貴方はどれ？
望んでこの街に来たのでしょう？
何でも望むものになりなさい。
たとえ駒だとしても。
「たぶんビショップだ」
貴方は私に物語る。
真っ白なお坊様、真っ黒なお坊様。
その手は海岸教会を指差す。
夜の綺麗な街、貴方は幸せ？
この手は貴方と腕を組む。
夜の綺麗な街、貴方がなぜ？
「斜めにしか動けないからさ」
私は貴方に物語る。
そうね、口端を斜めに上げる癖、直したほうがいいわ。

ありったけの憎しみを貴方にあげるから、
ありったけの最後を私に下さい。
優しいキスも、激しいキスも、この街に置いて行きます。
貴方の夢が、私なしで叶いますように。
私の夢が、貴方なしで叶いますように。
聞いて頂戴、本当はものすごくつらいの。
貴方を引っ叩いてもいいかしら？
聞いて頂戴、本当はものすごく泣きたいの。
貴方を蹴ってもよいかしら？
優しい夜も、激しい夜も、あの街に置いてあります。
貴方の幸せが、私なしで叶いますように。
私の幸せが、貴方なしで叶いますように。
気づいて頂戴、本当は―――。
もう二度と、貴方を憎むことはないのね？

夜九時に生まれた貴方のために、カウントダウン。
テン、星空が好きだった貴方、女の子みたい。
ナイン、ドラゴンズばっかり応援してたけど、あそこセールがないじゃない。
エイト、イギリスでは霧の展示会があるなんて、嘘言ってた。
セブン、コンビニ弁当の匂いが嫌い。
シックス、これは秘密。
ファイブ、私の下１桁。
フォー、貴方の下１桁。
スリー、隙が無い貴方には無縁。
ツー、貴方は必ず電話を先に切ったわね。
ワン、子犬を飼うつもりって、どれだけ世話が大変か知ってるのかしら？
夜九時に生まれた貴方のために、私をリセット。
ゼロ！