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chikushou wankeikei middonaito
未完成の闇のなかで僕は目を覚ました。天井の照明は薄く光を落としている。部屋にひと気はなく、動くのは壁掛時計の秒針くらいのものだった。サイレントクォーツの滑らかな運針がかろうじて見てとれた。時刻は深夜一時を回ったところ。
僕はベッドボードに座っていた。人間と比べて、体に対して頭が大きな僕は両腕を前に伸ばして頭を前後にゆすってみる。重心が移動して前に倒れるように傾いだところで両腕でバランスを取りながら足をのばす。
よし、立ち上がった。
これで動くモノがふたつになった。
ベッドのうえには薄い掛け布団が畳まれもせず折り重なっていて、一人用のデスクとチェアには脱ぎ散らかしたままの衣類が載っていた。シャツの袖がデスクに置きっぱなしのマグカップに入り、冷め切ったコーヒーを吸い上げ変色していた。
目が慣れてきたようだ。
ベッドボードから飛び降りる。フローリングの床に、ぽふ、と着地して静電気で埃を吸いつけた。まとわりついてうっとうしいが取れるとは思えない。足の埃を払おうとしたらこんどは手につきそうで、切りがないと思う。
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