遠くて近しい君のレビュー

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 ※※※  互いの家に訪れ、映画を観あう時間も増えていった。  ただ、互いの両親にからかわれたり、観終わる頃には夜遅くなることもあって、そこは少し悩ましいところでもあった。 「ゆっくり映画を観れる場所、ほしいね」  そうぼやく真希に、平治が答える。 「いっそ俺の部屋で、真夜中の上映会でもやるか? 俺、そのままネットで感想書けるし」 「……平治、言ってる意味、考えてる?」 「まぁ、学校のこともあるし、肌も荒れるっていうしなぁ」 「そういうことじゃないよ?」 「じゃあ、どういうことだ?」  顔を歪める真希に、平治は困惑顔。  その勘の悪さに、真希は溜息を吐いて、顔をそらして言う。 「そんな夜中に呼ぶことと、かつインターネットの方が大事ってのが、最低って意味」 「……お、おぅ」  最低まで言われ、平治は少し落ち込む。  その耳に、だから真希が漏らした言葉は、届かなかった。 「……映画の感想と違って、ほんと、鈍いんだから」 「ん? なにか言ったか」 「たまには恋愛映画も観ましょ、ってこと。だから今日は、この映画ね!」 「……寝ないように努力します」  ――そうして二人で観た映画は、不思議なことにトゥルーも感想を書いており、平治は嬉しくなる。  ――不思議な偶然に、平治は"現実は映画よりも奇なり"などと、勝手に想うだけだったが。  それからも時間が合う時は、二人でレンタルビデオを借り、いろいろな映画を観た。  二人の好むアクション系だけでなく、恋愛系やサスペンス、ホラーやヒューマンドラマまで、多種多様な映画を観た。  そんな時、ふと、真希が不満を口にした。 「不公平だ」 「なにがだよ。レンタル料金、俺もちゃんと持ってるじゃないか」 「昔みたいに、感想、言ってくれない」  昔は映画を観た後、ずっと感想を真希に語り聞かせ、呆れ顔をさせてしまった時もあったのに。 「感想、言ってるじゃないか」 「……ホームページでは、ちゃんとした感想、書いてるんでしょ」  真希には、トゥルーのホームページアドレスを教えてある。  ただ、パソコンがないらしく、見てはいないと言っていた。 「なんでそっちには、ちゃんとたくさんの感想を書いてるの」
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