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不思議に想いながら、平治は理由を考える。
「話すより、書く方が考えながらできるし、好きなんだ。それに、オンはオンで大切だから」
「オン?」
「オンライン。ネットワーク上の付き合い。こっちでばかり楽しくなっちゃ、向こうの人にも悪いだろ」
「……悪くはないでしょ」
「いつお前が、また映画を観てくれなくなるかも、不安だしなぁ」
からかうようにそう言う。
また真希は、怒るように言い返してくるだろう。
平治はそう想い、身構えていたのだが。
「――そう。そうなんだ」
寂しげにうつむく真希は、それ以上何も言わず、リモコンの再生ボタンを無言で押す。
「えっ、っと、その」
「映画、始まるよ。明日返すんだから、だまってて」
それから真希は、無言で映画を、じっと見続けた。
(俺、またなにか、やっちまったのかな)
からかいすぎたを謝ろうとしても、彼女は映画に集中しているのか、声をかけづらい。
そして声をかけられないまま、今日の観賞会は終了となり。
「じゃあ、おやすみ」
「おやすみ」
小さく呟いて、真希は静かにドアを閉めた。
(……このモヤモヤ。トゥルーさんに、相談するわけにもいかないしな)
共通しているのは映画の話題だけなのに、なぜか、そんな考えが頭をよぎる。
帰ったら、今日は何の映画を観たのか、読ませてもらおう。
平治は家のドアを開けながら、そんな考えで、モヤモヤをごまかした。
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