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※※※
翌日、平治はどこか気が抜けたまま、一日を過ごした。
吐き出す予定だった文章を胸にためこんだままだったため、それがどこか、頭の隅にずっと残っていた。
「ネットワークの出会いは嘘、なんて言葉があるけれど、じゃあ現実の関係性は真実なのかって話よ」
放課後の教室でたそがれていると、声をかけられる。
「お前、友達と帰ったんじゃないのか」
「話したいことがあったから」
そう言って、近づいてくる幼なじみ。
平治はとまどい、きつく返答する。
「いいのか。俺と学校で、こんなに近づいて」
「落ち込んでるのが、わかったからね」
真希の言葉に、平治はうろたえる。
彼女からの視線を避けようと、ぼさぼさの髪をかきあげる。
(ええぃ、くそ)
落ち込んでいる理由を、彼女にはあまり知られたくなかった。
(……確かに、怒る理由も、わかるんだよな)
平治の胸に、彼女を代わりにしようとする考えが、無意識に生まれていたのは否定できない。
(サイトで語れないから、真希でって……軽すぎんだろ)
まるで浮気をするような心地に、平治は軽い自己嫌悪に陥る。
(『君の視点は、クールだね』)
(現実の俺は、レビュー内容ほど、冷静になれないのにな)
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