遠くて近しい君のレビュー

5/15
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/15ページ
 ※※※ 「――いいな。このホームページ」  仮想都市をネットサーフィンで渡り歩くうちに見つけた、ある一つのサイト。  簡易的なテーブルとリンクで造られたそのページは、いかにも初心者的な趣きがあり、平治もすぐに移動しようか迷ったほど。  ――だが、そこには、平治にとってのお宝があった。  多数の映画の感想という、お宝が。 (共感するというか、しっくりくるというか)  ホームページの相手は、映画館というよりも、レンタルビデオ店やテレビ放送での映画レビューが多かった。  ただ、平治も似たような視聴環境だから、より親近感がわく。 (トゥルーさん……か)  平治は、管理人のハンドルネームを確認しながら、アドレスをブックマークする。  ――それから、平治は唯一備えつけられた掲示板に、毎夜訪れることが日課となった。  管理人の出現時間は短かったし、リアルタイムで返信が返ってくるわけでもなかった。  だが画面の先から、見知らぬ相手から返信が来るのは、新鮮な驚きがあった。  ――『君の視点は、クールだね』  トゥルーは最初の一言に、いつもそう添えてから、平治の感想に返信してきた。  ――「客観性を持って作品に接するのが、感想を書く際の務めです」  最初は、皮肉られているのかとも想っていた。  が、どうやら熱情的なトゥルーの感想と、対比をしているらしかった。  現実では、なかなかここまで、自分の趣味を話しあえる相手はいない。  だからこそ次第に、平治は返信をしてくれるトゥルーに、のめりこむようになっていった。  ネットの先の、顔も性別も知らない、心地よい相手へと。
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!