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※※※
それから、レンタルビデオ屋に出入りする真希の姿を、よく見るようになった。
「なんで変装してくるの」
「……イメージってのが、あるからね」
放課後を過ぎ、夕飯を終え、深夜というには早い時間。
近くのさびれた店へ借りにくる理由は、学校の友人達に、こうした映画が好きだと知られたくないから。
「いろいろ気をつかってたら、ストレス解消に借りた映画が面白くて。……でも、明らかに、話題にしづらい映画ばかりで」
スプラッターにホラー、SFにアクションと、真希は派手でスッキリとした映画が好み。
幼い頃、まるで男子のように一緒に興奮しあった姿は、今の真希とは重なりにくい。
「恋愛ものも好きだけど、そればかりじゃ飽きちゃうし」
「案外、大丈夫そうな気もするけどな」
「そうじゃない場合に耐えられるほど、強くないよ……。だから、さ」
途中まで口にした言葉を、でも、真希は続けなかった。
「だから?」
平治の問いかけにどうすべきか、何度か迷った後。
レンタルビデオの並ぶ棚の端へと移動しながら、ぽつりと、不満げに呟いた。
「……だから、あなたと話せたら楽だったのに、距離をとられちゃうし」
意外な言葉に、平治はどう答えるべきか、頭を悩ませた。
「それは、ごめん」
謝ると、そうじゃないの、と真希は言い直した。
「こんな格好してもさ、なかなか変わらないものってあるんだなって、今更知ったの。……自分が、悪いんだけどね」
「悪くないだろ。そうしてからのお前、男子の間でも話題だしさ」
「ははっ。じゃあなおさら、この趣味は打ち明けられないねぇ」
「俺は好きだけどな、こうして話し合えるのは」
平治の何気ない言葉に、逆に、真希が眼を見開く。
「えっ……」
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