前科一犯は住所不定

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「電話番号も無いよなぁ……」 今夜は野宿するしかないかもしれない。でも、家なんてどうやって買うのだろう。いつも父に任せきりにしていたから、そんな知識は身につけて来なかったし。 ひとまず大通りへと移動し、荷物を抱えたまま、様変わりした地元をブラつく。 昔は静かだった自宅の周辺も、パチンコや韓国料理店の入り乱れるコリアンタウンとなってしまった。日本語がロクに聴こえてこない。 「……日本なのかなぁ、ここ」 韓国に行った事は無いし、韓国料理も食べた事がない。どうやら中華料理に近いようだが、辛味の強いものは喉に響いてしまう。 ひとまず目に付いた地下鉄の駅に入り、有名な新宿や池袋や品川でも目指そうかと考えた。券売機が電子化し、電光掲示板は豊富な情報を載せ、ホームでは各国語対応のアナウンスが流れる。 日本とは、こんなにもうるさい国だっただろうか。 目がチカチカするし、電車の音もキツくてカビ臭い匂いがする。 もともと電車は得意ではない。車移動が多かったし、もしくはバスだったから。ガソリンの匂いが漂わないのは良いが、それ以上に人や、化粧品や化学薬品といった混成の匂いの方が気になる。     
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