前科一犯は住所不定

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不信感と、緊張感と、戸惑いのあるような様子。肩は明らかに強張っているし、こちらを見上げるメガネの奥の視線にも、不審者めいた警戒心を感じる。 「あの、何か?」 「少し場所を変えましょうか。個人情報の取り扱いは、このご時世だと繊細なんですよ」 「そうなんですか」 案内された個室に入り、使い捨てらしきプラスチックコップに冷茶を出される。ひとまず口を付け、書類に続きを書き入れようとしていると、やはり「住所」と「電話番号」の記入欄があった。 さて困った、今はどちらも持っていない。 「仁比山さん。色々込み入ったお話を伺いますが、よろしいですか?」 「はい」 「私、本日担当のツヅキと申します」 名刺には社名の『株式会社不動産Share Like Home's』と書かれたロゴと、中央部に『都築福郎』の名前が大きく印刷されている。 「仁比山さんは、なぜお住まいをお探しなんですか?」 「えーと、私出所して来たんですけど、家が無くなっちゃってて」 「はい」 「どこかに泊まるのにも住所が必要なんで、とりあえず家が欲しいんですよね」 「……ご自身の知名度に関しては、どのくらい把握されてます?」 「割と有名だと思います。でも、さっき行った地元では無反応でしたね。10年経ってるからなのか、海外の方が多かったせいか、特に見られている感じも無くて」 「はい」     
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