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「人間くさくなったのは、貴方のほうでしょう、憲二様」
魔物と呼んでいた男が、囁いた。
まるで幼子を慈しむような暖かな瞳で笑いかけられて、頬に熱がさす。
「指の先まで、愛されて。貴方は変わった」
風の音、
むせ返るような桜の葉の匂い、
そして、懐かしい男の声に包まれる。
「・・・離れた理由を、私が知らないとでも思いましたか?」
ざわめきが、押し寄せてきて、遠ざかる。
「貴方は、ずいぶんと綺麗になりました。本当に」
落ち葉の間からこぼれる言葉。
昔よりも、ずっと。
まぶしいほどに。
あなたは、本当に、美しい。
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