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わたしの魔法は良く効いた。
セラは夕方には起きだし、翼を軽く動かせる程度に回復した。
「マリィはすごい魔女なのね。明日には飛べそう」
セラは明るく笑ったが、わたしは苦笑しか返せない。
「治療が得意なだけよ。わたしは半人前の魔女で、すごくなんてないわ」
「そんなことないよ。本当にありがとう」
遠い西の大地から旅をしてきたのだとセラは語った。
「行く先が決まってるわけじゃないの。どこか住みやすい土地がないか探してるの」
「住みやすいって、どんな?」
尋ねると、セラははにかみつつ答えた。
「夜に飛んでも大丈夫な町を探してるの」
そしてセラは己の身の上を語った。セラの故郷は山に囲まれた高地で、複雑で危険な気流で満ちているという。空に生きる有翼人にとっても、明るい時間でないと飛ぶのは危険らしい。しかし生まれつき瞳の色の薄いセラは、日中に眩しい空を飛ぶことが出来ないのだという。
「飛ぶことは大好きなの。夜なら飛べるし、だから岩山とか山脈がなくて、有翼人に偏見のない、空の広い土地を探して旅をしてるんだよ」
怪我の原因は、荒野の向こうの村で漁師に撃たれたことだとも語った。
「この辺りは魔女の土地で、有翼人になじみがないから怖がったんでしょうね」
わたしの言葉にセラはため息をついた。
「あんなに怖がられたのは初めてだよ」
「ここは古い掟に縛られた魔女の土地よ。有翼人が住むのは禁止されているの。長居はお勧めしないわ。東の国に行けば、有翼人がいると聞いたことがあるから、そっちに行くのはどうかしら?」
セラはわたしを不思議そうに見た。
「有翼人が駄目なら、マリィはどうして私を助けてくれるの?」
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