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セラは翌日の夕方に旅立っていった。
別れるまでの間、わたしたちはたくさん話をした。セラの物語はわたしの物語とよく似ていた。生まれた瞬間に引き離された双子が十六年ぶりに巡り合ったらこんな感じかもしれないね、とわたしたちは笑い合った。
治療のお礼だと言って、セラは旅の最中に手に入れたという小物をいくつも譲ってくれた。その中に異国の植物の種を見つけて嬉しくなった。この種はどんな姿に育ち、花を咲かすのだろう。それを想像するだけで楽しい。
魔女の土地を旅するセラのために、わたしは地図と魔法の力を込めたお守りを贈った。
「これを首にかけて物陰に隠れれば、誰からも見つからないように魔法をかけてあるの。魔女に見つかりそうになったら、これを使って隠れて」
「昼間じゃなくても効果がある?」
「一度かけた魔法は夜でも昼でも効果があるから大丈夫」
セラは何度も何度も感謝を口にして、手を振って飛び去って行った。
濃い灰色の翼は夜闇にまぎれてすぐに見えなくなる。
夜の翼、とわたしは思った。彼女は昼よりも夜に飛ぶのに相応しい。
――夜の翼に良い風が吹きますように。
セラの姿が見えなくなった後も、わたしは長いあいだ空を見上げていた。憧れと、祈りと、寂しさとを抱いて。
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