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「え…えと……ほら、深月、お前、この間由宇に作り方習ってなかったっけ?」
「……え?」
「大地の誕生日祝いに何か自分で作ってやりたいなあって。いきなりケーキとかだと失敗するから、まずはオムレツでも…とか言ってさ」
「あ……うん。そう、そうなんだ」
慌てて由宇はコクコクと頷いた。
「一人で作ったのは初めてだけど、思ってたより上手くいったみたいでよかった。頑張った甲斐があったよ」
「そう…なんだ」
まだほんの少し納得出来ていないようだったが、それでも大地は素直に頷いて食事を再開してくれた。智秋と由宇はこっそりと視線だけでお互い顔を見合わせる。
やはりわかるのだろうか。
考えてみれば智秋でさえすぐに気付いたのだから、生まれた時から深月と一緒にいる大地が違いに気付くのは当然のことなのかもしれない。でも、だからと言って今更ここで大地に本当のことを言えるわけもなく。
智秋も誤魔化すように軽く首を振り、大地に倣って目の前にある美味しそうな料理を口に運んだ。
「……ほんとだ」
改めて味わってみると、確かにそれは今まで由宇が作ってくれていたものとまったく同じ味がした。
舌触りのいいなめらかなオムレツにちょうどいい焼き加減のウィンナー。付け合わせのサラダもコンソメスープも申し分ない出来栄えだ。
目の前の料理は比較的簡単なメニューではあったが、だからこそこれは初めて料理をした人間に出来るものではない。普通は火を通しすぎて焦げ付かせたり、逆に生焼けだったり、何かしら失敗するはずなのに。
本当なんだ。
本当に、間違いなくこれは由宇が作ったものなんだ。
疑っていたわけではないが。それでもやはり。今、ここにいるのは深月ではなく、由宇なのだと。
由宇がいるのだと。
ただ、その事実が嬉しいのか哀しいのかは、智秋にもよくわからなかった。
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