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「楽しみだな」
そう言うあなたの気持ちはわかってる。
楽しみと思えないことを。
わたしも本当は今日までのようにあなたと過ごしていきたい。
何がおかしいのかもわからないのに笑いあったり、あなたの旋律にのってひとつになるのを感じていたい。ただ傍にいたい。
――だけど、それ以上に
「耀」
――気付いて
わたしを輝かせたように、あなたにはじぶんを光のあたる場所へつれていける力があるの
瞳が濡れて、より一層あなたの姿にピントが合う。
「美月……綺麗だ」
「ありがとう。耀がいてくれるからだよ」
――わたしの光をあなたに分けるわ
「僕もだ。美月がいてくれるからもう苦しくない」
――だからもう寂しさだけに囚われないで
「いつものあの曲を弾いて」
そう言って椅子へ座らせると、わたしはあなたの隣で最初の音を呼吸も忘れて待った。
これから聴けると思うと心が躍る。
わたしが100%咲く夜に。
あなたは躊躇してわたしを見つめる。
それから何かを振り切るように視線を逸らすと、白と黒の鍵盤に向き合った。
その瞳には闇に咲く純白の花にも劣らない、ほのかな光が宿っている。
――もう、耀はだいじょうぶだね
目を閉じて、あなたの奏でる音の波に揺られていた。
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