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請われる心に応える間もなく乙女は戦う義と忠のため
「竹子さま、考え直して頂けませぬか」
玉木は隣に腰かけている竹子を愛おしそうに見つめた。竹子はきりりとした表情を崩さず語り出す。
「男子たるもの何事にも動じることなく、日々のお役目を精一杯勤めることが本分だというのに、色恋に心奪われるとはなんと情けない。その上、おなごのような軟弱な物言い、竹子はそのような方とは夫婦(めおと)になりたくはございません」
竹子は縁側から立ち上がり薙刀の稽古の続きとばかりに中庭で一人黙々と木制の稽古用の薙刀を振るう。縁側に腰掛けたままの玉木はひとつため息をつき、意を決したように立ち上がる。玉木は中庭から道場に戻り、一番短い木刀を取って中庭に向かう。
「竹子さま。戦というものは弱肉強食です。義の心のみでは勝てませぬ。なんとしてもこの縁談を反故にして実家に帰ると言うのなら、この勝負で私に勝てたら諦めましょう、いざ勝負」
玉木は木刀を構え竹子に勝負を挑む。竹子は小さく頷き余裕の笑みさえ浮かべている。薙刀相手に短い木刀とは完全に舐められている。絶対に負けるものか。竹子はきっと目つきを鋭くした。
「望むところ。おなご相手と侮り手加減などなさいませぬよう。いざ!」
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