請われる心に応える間もなく乙女は戦う義と忠のため

2/11
10人が本棚に入れています
本棚に追加
/11ページ
玉木は木刀を大きく振りかぶり、竹子に突進していく。竹子は鋭い視線で大きく振りかぶり過ぎた男の胴を薙刀で突こうと素早く薙刀を前へと押し出す。しかし、竹子の真っ正面にいたはずの男は姿を消しいつの間にか竹子の真横にいた。 不味い、竹子は押し出したままの薙刀を左回りに回転させ、玉木が振りかぶった面が入る前に遠心力を利用して横っ腹に薙刀を叩き込む。玉木は木刀で大きく振りかぶり過ぎて、竹子の薙刀をもろにくらってその場に倒れ込む。玉木は脇腹を押さえながら苦笑いして竹子を見上げる。 「参った。竹子さまは本当にお強い。戦に赴く人の気迫には勝てませぬな。この勝負私の負けです。叔父と父が何かとうるさいでしょうが、私は諦めました。自分より強い妻に一生尻に敷かれるのはごめんだ。それに…。勝てると思えなくとも戦わねばならぬ時がございます。きっと今がその時なのでしょう。」 「この赤岡家で養女としてお世話になり、有り難い縁談まで整えて頂きましたのに心苦しゅうございます。しかし、私も自分より武芸が苦手な旦那さまは嫌ですわ。私より強いお方夫婦になりたいものです」 「それじゃあ竹子さまはずっと行かず後家ですね。貴方より強い男はそうやすやすとは見つかりませんよ」 「まあ玉木さまったら意地が悪い。負け惜しみかしら」 竹子と玉木は中庭で楽しそうな笑い声をあげていた。     
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!