請われる心に応える間もなく乙女は戦う義と忠のため

5/11
前へ
/11ページ
次へ
実家に帰った竹子を待ち受けていたのは過酷な戦況だった。官軍は銃や砲台をはじめとする装備の近代化に力を入れていて、槍や刀では太刀打ち出来なかった。そして、官軍は鶴ヶ城の城下まで責め入り、ついこの前まで幼子だったような白虎隊まで駆り出された。いや、駆り出されたというより彼らも会津武士として戦う覚悟に溢れており、どうか戦に私たちもと願い出てその願いが聞き入れられたのである。竹子達は娘子隊を結成して同じように戦の最前線に立とうと請願したものの、 「女が戦に出るなど会津は後がないと敵に知らしめるようなもの」 「女が戦に出るなど足手まといどころか敵の慰み物になる。城に隠れて操を守れ」 はじめはけんもほろろに断られていたが、竹子達の義の心が、頭の固い頑固者の会津武士達の心を動かした。なんと戦うことを許されぬなら娘子隊全員、この場で自刃致しますと直訴したのだ。 竹子達娘子隊はその覚悟を認められ戦うことを許され、髪を短くし男装の羽織袴で戦に赴いた。決戦の場は通称涙橋と呼ばれていた。 官軍の兵士は竹子達の男装に気がつくやいなや、生け捕りにして慰み物にしようと舌なめずりするような目つきで見てくる。その男ならではの下卑た心の隙を突いて、竹子達は薙刀で官軍の敵を次々と倒していく。 所詮女となめてかかった敵は顔色を変えた。 「生け捕りはやめだ、殺せ!」 銃弾の雨が竹子達を襲う。竹子の胸を銃弾が掠める。一瞬うずくまった竹子だったが、立ち上がって薙刀を振るう。 「頭を狙え!」     
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

10人が本棚に入れています
本棚に追加