ただ、隣にいてくれたひと

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ただ、隣にいてくれたひと

 学校からの帰り道。まだむわりと息苦しい熱気がまとわりつくが、それでもほんの少しだが秋の気配のするそんな夕暮れ。  私はずんずんと音がしそうな程に、苛々とした歩調で歩いていた。  西陽は目に優しくない輝きを放って水平線へとその姿を隠そうとしている。そんなことに気づく余裕もなく、ただ頭の中で煩く鳴っている警鐘を追い払うように、長くなっていく影を隣に連れて歩いていた。  歩いても歩いても、心の中のもやもやも影もついてくる。追い払うことは叶わない。それでもどうしてもそれから逃げたかった。  近所の公園に差し掛かって足を止める。このまま家に帰るのも心の整理がつかないまま家族の顔を見るのもちょっとしんどい。  ベンチでこの嵐が過ぎるのを待とうか、と思って顔を上げると、ひとつしかないベンチではどこかの年齢不詳の男性が寝ているのが見えた。  仕方がないのでベンチの近くのブランコに乗ると、小さく漕ぎ始めた。肩にかけた荷物が邪魔なので、土のつかない所において、また漕ぎ始める。  幼い頃によく遊んだ公園だ。こんなに狭かったのか、とそんなことが頭に浮かぶ。 「……あーあ」     
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