解放されるために、もう一度。

3/4
26人が本棚に入れています
本棚に追加
/90ページ
 これ以上、三人の間に説明などいらなかった。それからは高校時代の事を懐かしみながら楽しく会話が弾んだ。三人の中で、もうあの頃は完全に過去だった。誰も恨み言わなかった。  そう言えば、これと良く似た光景を前園は思い出していた。(ああ、あれは……)  確か高校生の時。佐竹と楓が付き合っていた頃に自分も一緒に食事に付き合わされたことがあった。確か、不意に楓に手を握られて焦ったな。  ここにいる三人は紛れもなくあの時の三人だけど、月日が流れ今は自分が楓の隣にいる。ここに来るまでには本当に色々なことがあった。 「相互依存の三角関係なんだって」  楓は静かに言った。 「相互依存の三角関係?」  透哉が聞き返す。  楓は矢崎に言われたことを二人に話した。前園にもこの話をするのは初めてだった。お互い、相手に必要とされていると思っていたからこそ続けていた関係。透哉が結婚した時にその関係は壊れたかに見えたが、それぞれの心の中で燻っていた。 「確かにそうかもな」  前園が呟いた。 「でもこうやって三人で逢えてやっと解放される気がする」  楓が言った。 「ねぇ、茜も呼んで良いかな。茜も二人に逢いたがっているんだ」  透哉がスマホを取り出す。楓が茜と会って話すのは初めてだ。 「うん、勿論」     
/90ページ

最初のコメントを投稿しよう!