シーズン、真っ最中①

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「嫌なわけないでしょ? そんな心配しなくても良いって」  どことなく不安そうな表情で、不思議な質問ばかりをする前園に、楓は苦笑した。 「よかった」 「何が?」 「お前に嫌がられなくて、良かった」  きっと、彼の中では昔の記憶が過ぎったのだろう。それに気がついた楓は優しく微笑む。 「もう、そんな事気にしなくて良いってば。嫌だったら啓とこうしてないからね」 「そうか。それなら良いんだ」  楓の言葉に安心したのか前園の表情はいつもの彼に戻っていた。そして楓が再び目を閉じると前園の唇が楓の唇にそっと重なった。 「んっ……」  楓はその気持ちよさにうっとりとしていた。いつもはクールな彼の熱が嬉しくて愛しい。長いキスが終わりゆっくりと唇が解かれた。楓は前園の目を見つめていった。 「好きだよ。啓」 「俺は愛している」  心底愛しそうに前園は再び楓に口付けた。  翌朝、前園が送ると言ったが、大事な時だし一人で大丈夫だからと花束を抱えて部屋を後にした。 「家に着いたら、絶対に電話しろ。それから家の鍵はすぐに掛けるんだぞ。あと……」 「もう、分かったって。大丈夫だから。もう、啓って心配性なんだから」  小さい子供の保護者のような前園の様子に、楓は再び苦笑いをしてホテルを後にした。
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