解放されるために、もう一度。

2/4
26人が本棚に入れています
本棚に追加
/90ページ
     数日後、前園と楓が待ちあわせ場所のレストランに行くと既に透哉が席に座って待っていた。二人を見つけた透哉は緊張した面持ちで立ち上がる。 「あの……」  透哉の頭の中では色々と謝罪の科白が並べられているというのに、次の言葉が出てこない。すると楓が、まっすぐに澄んだ瞳で透哉を見て言った。 「透哉、元気そうで安心した」 「え?」  あの出来事の後だ。楓が普通に接してくれるなんて思っていなかった。透哉は責められ、罵られる覚悟でここに来た。一生恨まれても仕方ない、楓はきっと傷ついた瞳をして軽蔑して透哉を見るだろうと思っていた。それなのに楓はあんなことをしてしまった自分をまっすぐに見ている。昔と同じ澄んだ瞳で。それだけで透哉は十分だった。 「楓……前園……」  透哉は前園の顔を見た。 「ああ、楓もすっかり良くなった。もう過ぎたことだ」  前園も真っ直ぐ透哉を見た。 「ごめんね」  透哉はそれだけ言うのが精一杯だった。 「三人でこうやってまた会えて良かった」  楓が笑顔で言うとそうだなと前園が頷いた。 「ありがとう」     
/90ページ

最初のコメントを投稿しよう!