シーズン、真っ最中②

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シーズン、真っ最中②

 それから数日後の東京。  透哉は球場の隅にぽつんと立つ人物を見つけた。 「あれ? 鈴木さん?」  そこにいたのは女子アナウンサーの鈴木茜だった。 「あ、佐竹選手……」 「どうしたの?」   茜は手に何か持っている。ノートのようだがかなりボロボロだ。 「それ何?」 「あ、これ……私、野球の事まだまだ勉強不足で、自分なりに色々野球のルールとか球団の事や選手のみなさんの事とかまとめたノートなんですけど、ちょっと……」 それにしてもボロボロだ。と言うより破かれている。 「もしかして、誰かに嫌がらせされてるの? それって故意に破かれてるよね?」  透哉は茜の顔を覗き込む。 「いえ、私が悪いんです。きっと至らないところがあるから」  茜はポツリと零した。 「そんな事ないよ! 鈴木さんは一生懸命やっているじゃない。僕で良かったら力になるよ。他球団の選手の事は分からないけれど、ルールとか球団の事とか、分からない事があったら僕に聞いてよ」  透哉は笑顔で力強く言い切った。茜は驚いて透哉の顔を見つめ、口籠る。 「え、で、でも、お忙しい佐竹選手にそんな事……」 「大丈夫。ちょっとその切れ端とペン貸して」  透哉はノートの切れ端にサラサラと何かを書いて茜に差し出した。 「これ、僕の連絡先。電話には出られない時もあると思うけど、連絡してよ」 「そんな……いいんですか?」  茜は差し出されたメモを受け取りながら、申し訳なさそうな顔で透哉を見る。 「先輩たちの好きな食べ物とかも聞いてよ。僕は一生懸命頑張っている人を放っておけない性格なんだ」  透哉はにっこりと笑った。茜もつられて微笑んだ。  それから透哉は茜に野球のルールやプロ野球の色々な仕組みを教えた。彼女の何事も真面目に取り組む姿に透哉は好感を持ち、二人はそれ以外でも連絡を取り合った。  透哉の中に楓の存在がなかったわけではない。でも、もうずっと連絡を取っていない、おまけに楓は前園と続いている。もう楓との関係は自然消滅に近かった。  程なくして透哉と茜は付き合うようになった。
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