26人が本棚に入れています
本棚に追加
/90ページ
彼の実家
シーズンが終わったある日、前園と楓は鎌倉にいた。
楓が前園の家に行くのは初めてだ。
「ここだ」
前園が立ち止まった先には二階建ての日本家屋があった。
「こんにちは、お邪魔します」
楓は緊張した面持ちで玄関を入った。
「楓ちゃん、いらっしゃい。良く来たわねぇー」
そんな楓の緊張をよそに、そこには前園とは正反対のハイテンションな母が二人を出迎えた。
「あのこれつまらない物ですが」
楓は手土産を手渡す。何にしようか迷ったのだが結局デパ地下で羊羹を買っていた。
「まぁそんな気遣いはいらないのに、さあさあ上がって」
楓が通された応接間には前園の写真やトロフィーなどが沢山飾ってある。応接間のソファに座ると母親がお茶と楓が買ってきた羊羹を出した。
「おばさん、前から楓ちゃんに会いたかったの。この子ったら最近になってやっと楓ちゃんの話をだしてね。高校時代からずっと楓ちゃんの事を思っていたなんてね」
しみじみ言いながら母親はお茶をすする。啓ってそんなこともお母さんに話すなんて意外だな……楓はそう思いながら前園を見ると、彼は特に気にすることなく黙々と羊羹を食べていた。
最初のコメントを投稿しよう!