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 「赤ちゃん、痛がらないように…、ちょっとだけゆっくり…、激しくないように、ねぇ、しよう?」  彼の首に手を回し、背伸びして頬にキスをした。涎がすっと糸を引き、何故かとても卑猥な気分になった。  賢二は黙ったまま、結依を寝室へとエスコートした。洗い物は途中だったが、彼もその気になったようだ。お姫様を案内するように、優しく手を握ってくれている。そのことが更に結依の気持ちを高めていた。妊娠して、安定期に入る前はちっともそんな気にならなかった。だから実は、二人は久しぶりに行為に及ぼうとしていた。  「電気…消して」  数ヶ月前とは完全に違う体つきになっている結依にとって、賢二に見られ慣れた筈の裸は、少し恥ずかしくあった。彼女のリクエストに応えるように、彼は部屋の明かりを絞った。完全に真っ暗にはせず、微かなオレンジ色が寝室を包んでいた。  「エッチ。真っ暗にしてよ」 「顔がちゃんと見えた方がいいだろ」 「もう…」  そう言いつつ、結依は頬が緩んでいた。体の一部が触れる度に、感じたことがない程ゾクゾクするのが分かった。気分が昂揚すると肉体は、神経が剥き出しみたいに敏感になる。  まるであの時のようだ、と彼女は思った。  彼の局部を優しく彼女が摩擦する。彼が反応するのが解る。ふふふ、と結依は声を立てた。  「ねぇ、もういいんじゃない。もう私、待てないかも…」  吐息が少し荒くなっている。結依はまたそんな自分に興奮していく。全ての電気が消えていなくて良かった。こちらを向いた彼の顔をまじまじと見つめ、ときめく心に酔っていた。  「その前にさ、俺、妊娠7ヶ月になったら言おうと思ってたことがあるんだ」 「…なに?」内心、焦らしてんじゃねえ…、と結依は思った。でも今の二人は仲良し。そんな素振りも見せなかった。だってあと少しで、スゴく気持ちイイものが私の中に…。「あ、もしかして、赤ちゃんの名前?そうだよねー、そろそろ決めないと。男の子だったらぁ…って私も」 「違うよ」 「じゃあなに?もう、早く言ってよぉ」
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