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高く跳べ
真っ暗な夜。
小さな押入れの中。
その小さな押入れの片隅で、膝を抱えて座っている少女の名前は里美。14歳。
襖を通して、母と祖母の言い争う声が聞こえる。
「お母さんが甘やかすから、あの子がダメになるんでしょ」
「あララが変なオトコと結婚シるから。ラから、変ラ子供ができラのよ。ケわいげのラい不気味ラコドモ!」
里美に夕食は用意されていない。夜が明けるまで、ここから出してはもらえない。
だけど、里美はこの押入れの中が嫌いではなかった。
ここにいれば、襖を隔てて、あの二人とは違う空間にいられる。
更年期を迎えた中年女性のヒステリックな金切り声と、大病を患い、麻痺の残る舌から発せられる老婆の全力の悪態を、黄ばんだ紙と腐りかけの木枠からなる襖が、いくらか和らげてくれる。
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