真夜中に逃げていく、私たちの憂鬱

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汗だくになりながらも、里美は南京錠を叩き続ける。 巨大な南京錠は少女の非力な打撃では、びくともしない。しかし、里美は諦めることなくバットを振り続ける。 同じころ、町の交番では、あの補導官がリラックスした表情でお茶を飲み、休憩していた。 仮面は、外されている。 「ふう」 ふと、デスクにおかれている書類に目をやった。 古い書類を整理している途中だった。 「ああ、忘れていた」 書類を一枚手に取った。 【未解決事件リスト】 この町でおきた凶悪事件のうち、未解決の事件をまとめた者だった。 一番最近のものは 【〇〇夫妻殺人事件・・・△年◇月◇日、深夜2時。「両親が殺された」との通報・・・被害者の交友関係は希薄で、被害者を知るものの犯行ではく通り魔的犯行とみられる・・・】 書類の最後には、被害者の写真、そして、第一発見者で通報人である被害者の子供の顔写真が添付されていた。 「ああ、この間の子供か・・・」 再び、里美の家の前。 「こっちに来なさい!私が教育してあげる」 里美の母の右手が、青年の左肩を掴んだ。 一方、青年の右手には、真っ白なナイフが握られていた。
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