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望んでいたわけじゃない。運命から逃げようとして失敗しただけ。逃げた? 違う。最初から逃げ場所なんてなかった。
檻の中で見つけた醜い者。意図してそうしたわけじゃない。私は同じ人間だと訴えたはずだ。
どうして、どうして……。
「飛び込んでしまおうか」
不意にカサカサになった唇が言葉を紡ぐ。声に出すと本当にそうしたくなるから不思議。
眼前に広がる海は、晴天の空に守られるようにキラキラしている。みんな真っ青で、入道雲の白が浮き出て少し違和感。
波の音が私を責めるから、全部が自分のせいに思えて悲しくなる。友達が欲しくないわけじゃない。一人でいたいなんて嘘。
「嘘だよ、全部」
今は誰もいない海。地元の人が散歩に使っているだけのちょっとした穴場だったんだけど、どっかのバカがSNSに画像をアップしたせいで早朝くらいしか落ち着く時間がない。
だから私は、日が昇る頃。午前四時くらいからここにいる。もう一時間になるだろうか。
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