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政治家である父を持つこの男は、警察関係者にも深い繋がりがありました。どんなに迷惑をかける行いをしても、どんなに人を傷つけようとも、男が罰せられることはありません。そればかりか、どんな悪いことをしても許されるこの男の下で、自分も自由気ままに悪さをしたいと考える連中たちが集まるようになりました。
次第にその集まりは大きくなり、粗悪な組織として、誰にも手が付けられない状態へとなってしまうのでした。
一層恐ろしくなったことで、町のみんなは諦めるしかありません。どうにもならないのです。町は悪党で蔓延ってしまいました。
「おばあちゃん」
「どうしたんじゃい?」
「お巡りさんは助けてくれないの? 弁護士さんは?」
「あらあら、弁護士なんて言葉どこで覚えてきたんだい? まぁ……そうね。お巡りさんは困った人を救う正義の象徴じゃよ。本当はね……。でもお巡りさんの中にも、悪い人はいるものじゃよ」
「じゃあ、わたしが困ったら誰が助けてくれるの? おばあちゃんをイジメる人がいたらどうするの? ヒーローはいないの?」
心配そうにする孫娘は、その小さい顔を可愛くしかめる。その様子にお婆さんは「心配しなくても大丈夫。続きを読むからね」と優しい笑みを見せた。
――近頃、ある噂が立っていました。
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