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困りごとを認めた手紙をある場所に送ると、何者かがその困りごとを解決してくれるといった噂です。そのある場所とは、辺ぴなところに位置する大きな建物です。外観は古めかしい教会のようですが、どのような経緯で建てられたのか、いつまで使用されていたのかなど詳しいことはわかっていない建物でした。大人でも近づくのを躊躇うほどの不気味さもあり、大抵の人は近寄りません。その建物の上部に見える銀色の鐘が、独りでに鳴り出すといった不可思議な現象も報告されていました。
その建物へと続く玄関口には、「シュノドス」と刻まれた文字が見えます。おそらくは建物の名前でしょう。
手紙を届けなければならないポストは、その「シュノドス」の前に設置されていました。そしてそのポストに投函された手紙は、次の日には消えてしまうのです。しかし手紙を回収している姿は、誰も見たことがないのです。
「オバケ……? ねぇおばあちゃん、これってこわい話?」
「怖いかい? この話やめるかい?」
「ううん。こわくなんて……ないもん!」
4歳の孫娘が見せる強がりに、お婆さんは微笑む。「わっ!」と少し驚かすと、飛び上がるように孫娘は「おばあちゃん、ひどい~」とジタバタした。
そんな孫娘の姿に頬が緩くなるのを感じながら、お婆さんは続ける。
――ある少年が、噂を耳にして手紙を認めました。
「はじめまして。突然のお手紙、失礼します。ぼくはこの町の小学校に通う8才児です。名前は書けません。お母さんに書いちゃダメと言われたので書けません。ごめんなさい。今回の手紙を出したわけは、助けてほしいことがあるからです」
お母さんに書き方を教わったのでしょうか。文面がとても綺麗です。
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