キョウカイセン

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「え、今、何て言った」今度は心の声でなく思わず声が出た。 「だってここマンションの5階だよ。飛び降りたら死んじゃうよ」 「大丈夫。死なない。死なせない。私を信じてほしい」  信じろって言われても。 「大丈夫。これは夢の中だから何でもありなんです」  えっ、そうなのこれは夢なの。さっき、ほほをつねった時、痛かったんですけど。 「たのむ。もう時間がないんだ。いますぐ飛び降りてくれ。夢なんだから。。。」  あれ、声が途中で聞こえなくなった。  何かよく分からないけど、相手が緊急事態なのはよく分かった。  夢なら飛び降りても死なないよね。  では、覚悟を決めて、声の主を助けに行きますか。  5、4、3、2、1、GO! 眩しい光で目が覚めた。  そこはいつもの見慣れた私の部屋。  何だか窓が気になり開けてみる。  そこもいつもと変わらぬ風景と思いきや、  誰かが向こうで手を振っていた。  知らない人だけど、どこかで見たような気がする。  不意に風がふいて、私の耳元にささやいた。 「昨日はありがとう」そんな風に聞こえた。  今日は、始まったばかりなのに一仕事終えた様な不思議な徒労感。  夢なのか現実なのか、思い出せそうで思い出せないもどかしい感覚。     
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