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~大儺儀 前夜~
大切なモノ。
それは人であれ、物であれ、記憶であれ誰にでもある。
人は自らの大切なモノを人生を通して守りたいと願う。
オレにとって、大切なモノが出来たのは六歳の時。
当時はよく泣いていた。
目に見える人ならざるモノの異様を見て恐怖し、家の外に出るたびに泣いていたのだ。
生まれながらに才能を持って生まれたにも関わらず、情けない姿を見せるオレに、周りの大人達、親でさえも、その様子を見て呆れるばかりで誰もかまってはくれなかった。
あいつは物心ついた頃から常に隣に在った。
唯一、泣くオレをその背で守ってくれた。
泣き止まないオレに優しい言葉をかけてくれた。
だからだろう。
あいつがオレを庇って傷付いた時、
自らの力の無さを呪った。
オレに力があれば、傷付かなかったはずだ。
オレに力があれば、守れたはずだ。
強くなろうと思った。
何者よりも強く。
そうすれば、もう二度とこんな思いはしなくていい。
もう守られるのは嫌だ。
これからはオレがあいつを守ると誓った。
最強。
どんな方法を使ってでも。
オレはその称号を手に入れてみせる。
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