破 「白炎」

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破ノ幕~炎上~ 〔記録〕  十二月三十一日。十九時。  陰陽師、以下五名による大儺儀(だいなのぎ) 執行。 木・ “陰陽博士”西洞院有隆(にしのとういんありたか) 火・ “陰陽師”土御門白臣(つちみかどあきおみ) 土・ “陰陽師”倉橋桃舞(くらはしとうま) 金・ “法師陰陽師”(おおかみ)(なお、当儀式における土地の術者) 水・ “法師陰陽師”久遠(くおん)   結果として、儀式は失敗。理由は不明。土御門白臣(つちみかどあきおみ)が原因の一端と見られるが、詳しくは調査の必要あり。 大嶽丸(おおたけまる)は健在。儀式は六割の完成であったため、力は僅かに削がれたと見られる。 また、西洞院有隆の死亡を確認。現時点で、儀式の遂行は困難と判断する。 至急、救援を送られたし。 以上。       ■■■  三大化生。  日本に古来より伝わる三体の大妖。御伽草子に語られる伝説上の存在。  それは、孤高にして無双の鬼。一体で万の軍勢に匹敵する闘神。  それは、流麗にして艶美の女。あらゆる仙術を修めた傾国の空狐。  それは、高慢にして絶対の鬼。全てを支配する鬼の王。  現代は、平安の世に比べ、妖の力は減衰したともささやかれる。それだけ強大な妖が駆逐され、残ってはいないからとも言える。  現代を生きる陰陽師は、これら伝説に語られる強力な妖を相手にした事が無い。なればこそ、陰陽寮は、今打てる最善として現代でも最強の呼び声高い者を一所に集めたのだ。しかし、かれらは理解できているのだろうか。  伝説に語られるとは、一体どれほどの力を持てば可能なのか。有象無象と同様に扱えば、破滅の時は間近となるだろう。
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