破 「白炎」

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「オーケーオーケー。遺言はそれかァ? まあ、今回の件に関わっちまったアンタの不運を呪うんだな。燃え散れ!」  白の光。先ほどの倍の大きさの火球が白臣(あきおみ)の頭上に発生する。彼の荒々しさを形にしたような焔。その輝きは次第に増し、薄暗い廃墟の中を眩く照らしていく。目が眩み、(まぶた)をぎゅっと細める。トドメを刺すつもりだ。巨大な火球は白臣(あきおみ)の手の動きに連動し、こちらに襲い掛かってくる。巨大な太陽がこちらに向かって沈もうと動く。久遠(くおん)は自らの運命を受け入れるように、座った姿勢で目を閉じた。      ■■■  時間は少し巻き戻る。  十二月三十一日。十九時。  久遠(くおん)の目の前には、見るも無残な血溜まりが生まれていた。夜の暗さも相まって、赤というよりは重油のようにも見える液体がゆっくりとその面積を広げている。顔をしかめてその様子を見ていた久遠(くおん)は、視線を目の前にあるもう一つに移した。その巨体を見上げる。身の丈十丈を超える甲冑の巨体はまるで一棟の建造物のように悠然と立っている。大きい。あまりにも分かりやすい恐怖が体を、いやさ、思考を奪う。  大嶽(おおたけ)(まる)。  その異様に改めて息を飲んだ。荒ぶる鬼神は今、刀を逆手で振り下ろした状態で停止しており、ピクリとも動かない。チャンスといえばチャンスなのかもしれないが、下手に刺激するのも危険な予感がする。慎重に動く必要があった。 (事前情報……というか、伝承では、こいつはもう刀を持っていない筈だが……)  久遠(くおん)は、鬼の持つ巨大な刀に注目する。月光を反射する曇り一つない刃は、寒気がする程の美しさを放っていた。滴る血液ですら、その美しさを引き立てる材料にされているような。  有隆(ありたか)(しゅ)を破ったのは紛れもなくその刀だった。明らかに霊剣の一種。 (なら、これは……まさか)  
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