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<最終決勝がっ!! 正にいま、始まろうとしています!!>
実況の人のよく通る声が、狂騒の中、響き渡っていく。どの道これで最後。その後の身の振り方とか、元いた世界に帰れるのかとかは分からないけれど、お金はあるに越したことないよね……
これ自体が壮大な夢の中での出来事である、という儚い思いもいまだ引きずり続けている僕は、どうせやるならやってやれぇい的な考えに至っている。
しかして。そんな細い決意は次の瞬間、あっけなくぽきり折られるわけであって。
フィールドには、何人もの術士っぽいヒトたちが、先ほどから円形の紋様を素早く、そして精密に描いていたんだけど、描き終わりと同時くらいに、そこからコロッセオの吹き抜けの上空に向けて、青と黄色が混ざり合ったような色の光がぶち上がった。
凄まじい光の奔流と、そして音。思わず耳穴を指で埋めてしまうほどの大音声に、周りを包んでいた歓声も一瞬やむ。そして、
「……」
光が収まったところには、禍々しさが寄り集まって混沌を為しているかのような、何体かの化物の集合体のようなモンスターが鎮座していたわけで。
肉食草食問わずの獣っぽい外観のものから、軟体質のイカみたいなやつ、巨人の顔だけみたいなものが、ごてごてと積み重なっていて、モンスターの身体を無秩序に繋げましたよといった感じのフォルムだ。はたまた甲殻類的な巨大な目も飛び出していたり、昆虫然とした薄い羽根も生やしていたりで、ひと目カオスな感じの不気味さとヤバさが同居している。
これ呼び出したらあかんやつじゃね? との思いが、周りの焦燥を見るにつけ、ボクの中で確信の色を帯びていく。いや帯びとる場合ではないけれど。すると、
「ココココ……わらわを呼び出すとは、愚かなる者どもよ」
いきなりその化物から若い女性の声が飛び出した。テンプレ気味ではあったけど、見た目にそぐわない美しい声だ……いや、よく見ると怪物の中央部には、様々な肉に挟まれるようにして、ひとりの女性と思われる人の、肩から上が突き出しているのがわかった。
金色の長い髪はそれ自体が光を発しているかのように輝いていて、妖しさと美しさの同居した紅い目は、見ていると引き込まれそうだ。抜ける白い肌は清らかでなめらかそうで……いや、駄目だ駄目だ、あっさりとその魔力的なものに引っかけ上げられようとしかけていた自分を慌てて押し留める。
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