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<こ、これはっ……!! 伝説の魔神、ガラクネスト=アロナコ=フゥゾでは……っ!? 何という偶然、何という災厄ッ!! お、お落ち着いて行動をっ!! みなさんっ!!>
いちばん落ち着いてない実況のヒトの声に、場のどよめきは最高潮になってしまっているわけで。歓声はいまや怒号や悲鳴に変わりつつある。
コロッセオの真ん真ん中にいきなり現出した、その「化物」の姿に本能的な危機感/恐怖感を感じ取ったのか、観客の皆さんの中で逃げ出そうとする人のうねりみたいなのが起こっているのが見て取れるけど。ええー。
「くくく……こんなところで出会えるたぁ、俺もツイてる。このSSR級の魔物を狩れば、一躍『世界勇者』にのし上がれること間違いなしの獲物だぜぇ……へへへ」
テンプレ級の台詞をのたまわってる隣の熱血くんだけど、あれー、やっぱこんなタガの外れたテンションの奴しか、この場には残ってないんだね~と、ボクは軽く白目になりつつも、自分の逃げ道を探すために無理から黒目を下げて周りの様子を伺い始める。
「……悪しき者の手から、善良なる人々を守る。それこそが『勇者』」
またその隣のクールイケメンが自分に言い聞かせるように呟くけど、おお、こちらは流石落ち着いてらっしゃる。
「……俺に、続け」
さらに隣の寡黙系が、無表情のまま、ごつい剣を振りかぶり、前触れ無しで突進を始めた。
それを機にボク以外の「勇者」さん3名様は一斉に、20mくらいしか離れていない「化物」目指し、それぞれ間合いを詰めていく。
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