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<ああーっとぉ!! アルス選手、バロゥ選手、キグナ選手っ!! 三者三様に、目標に向かっていくぞぉぉぉぉぉっ!! 『魔神』に対しても一歩も引く様子は無いっ!! これぞ勇気ッ!! これぞ勇者ァァァっ!! そして我々実況と解説は、この非常事態にも職務を放棄することはないのです……ッ!! これもまた『勇気』……我々もまた、『勇者』……なのかも知れません!! どうですか解説ウガイさん? あれ? ウガイさん?>
こんな状況でも、実況のよく通る腹からの声は脱帽ものだけれど、解説の人はとっくにずらかっていたようで、ボクは一体どうすれば。
とりあえずは乗り遅れないように、先頭の人に追いつきすぎないように、小股で走り始める。何かあったらそく離脱。それを頭に叩き込みつつ。
「目標」が近づいて来た。やばいオーラみたいなものが肌を嬲ってくるよ。
「……ココココ、生きのいいのは好みだよ」
「魔神」と称されていたそのカオス集合体みたいな巨体の真ん中で、先ほどの金髪美女がすさまじく妖艶な笑みを浮かべているよ怖いよ……。
三勇者は常人場慣れした体裁きで「魔神」から弾け飛んでくる「触手」みたいなものを躱し、いなしながら接近していってる。すごい……!! これはいけるかも。しかし、
「お前らッ!! 相手が相手、今は共闘だッ!! 奴の気を引いてくれっ」
「……いや、私の必殺を撃ち込む。貴様らは左右に散って囮になれ」
「……俺に、続け」
ああー、やっぱりそうか!! 我強いのが勇者の基本メンタルだもんねー、と、チームワークとしては最低の面々を見やり、じゃあボクがこのパーティをうまく取り仕切れば? との考えに至る。
「!!」
至っている場合じゃなかった。「魔神」はこちらの力を推し量っていたのだろうか、触手の動きが今までの単調なものから、トリッキーでランダムみたいな感じに瞬時に変化すると、三勇者の思考をも読み切っていたかのような動きで、それらの身体を容易く絡めとってしまう。
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