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異世界って、もっと主人公に優しいと、そう思ってました……
「……」
いや、まだ異世界と決めつけるのは早いよ。
ボクの記憶は、家近くのコンビニ前でミニソフトをすするように舐めながらぼんやり佇んでいたら、そこに老人の運転する、いやに鮮やかな黄色のミニバンが明らかにアクセル/ブレーキを間違えた感で突っ込んできた、そこまでしかないし。
ボクの脳みそがバグって見せている夢か幻覚か、それである可能性はまだ充分ある。
自分にそう言い聞かせるかのように思うボクだったが、五感に感じる全てが、これまでの日常と変わらないほどのクリアさ/リアルさをもって今この瞬間も迫っていることについての説明がつかない。身体もこの通り、ぴんぴんしてるし。
異世界。言葉にすると最早新鮮味も薄れかけなその響きに、しかし自分が正にそこに放り込まれたとしたならば、どう飲み込むべきか迷うことこの上ないわけで。
何の能力も与えられないまま、素立ちの真顔状態でこの「世界」に送り込まれたらしきボクは、さしたる説明も受けないまま、ただただ辿り着いた街がちょうど「祭り」の時期だったようで、よく分からないノリで、その年の「最大勇者」を決めるイベント的なものに、強制参加させられたわけで。
そしてあれよあれよと勝ち進み、遂に「決勝」まで勝ち進んでいるわけで。
この世界に来てからは常態となっている真顔のままで、ボクは歓声とどろく決勝の舞台でただ立ち尽くしている。
ボクの名前は、結城 倫人。
平凡だった人生に、望んでない修羅場/鉄火場を提供された、哀しき高二16歳です。
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