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「リントぉっ、まったくお前ってやつは大した男だぜ!!」
そんな凪いだメンタルのボクに、往年のハリウッドばりの上っ面だけを撫でるようなセリフ感満載の言葉をかけてきたのは、ひと目オークとかと間違いそうになる外観の、でっぷりと太ったおっさんだった。
「この世界」に到来して右往左往していたボクに、何やかんや世話を焼いてくれたヒトではあり、それは感謝してもいいかなと思いつつも、やはりことはそう単純では無かったのであり。
よく回る口車にあらよと乗せられ、気付いたらこの「最大勇者祭り」とやらに参加させられていた。優勝者には莫大な富と栄誉が与えられるとか言うけど、何でこのボクが。
頭と腹に響くほどの歓声は、野球場のような、いやもっと的確に言うと「コロッセオ」のような円形をした、かなりの大きさの「場」のぐるりを巡っている。
「ぐへへへ、あと一つ勝てば、お前さんと俺は晴れての超絶大金持ちよぉ、ぐぇっへっへっへ」
よくそんなテンプレ感溢れるセリフ調で喋れるな、と思いつつ、何故言葉がすんなり通じるか、その疑問はいまだある。
ま、異世界に転移するくらいだ、言語野の書き換えくらいすんなり起こるものなのだろう。でもそれ以外はゲーマー帰宅部高校生のままの身体能力だし、特殊な能力を授かったという自覚もない。
何ならむしろ運動野とか、特殊能力野(あるのかは不明)をいじくってよ、とここに来てから何度も思ったけど、それはもう諦めているわけで。
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