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第一戦の相手は、スライムだった。
いやあの、ぽよんとした質感の愛嬌のある顔立ちの奴では無く、無機質極まりない、動く汚泥のような愛想のないモンスターだった。
ホラー映画に出てくるような、「見えない恐怖」みたいな感じで、無生物だと思ってたのが意思ありそうな動きをしてくると本当に怖い。それも最大限広がると六畳くらいはありそうな巨大さだ。
どうすんだよこれぇと思ってる間もなく、ボクの隣から、裂帛の気合い声と共に、戦士然とした屈強なヒトが、金属アーマーを揺らしながらそのスライムに突っ込んでいった。
それが合図なのか呼び水になったのか、一列に並んだ「参加者」から「炎」が放たれたり、ナイフのような飛び道具が宙を舞ったりしたのだけれど。
軟体質の身体を瞬時に縮こめると、濁った吐瀉物のような色をしたスライムは、それらを全て跳ね返したり受け流したりと、意外な器用さであっさり凌いでいた。
ええ……もしかしてこいつ相当強いんじゃね? どうも名前からは最弱のイメージがつきまとうけど、間近で見るその「静」の迫力のようなものにボクはたじろいでしまうばかりであって。
それでも、「もし初戦で負けて一銭も得られなかったとしたら、お前さんをしかるべきお肉屋さんに売り飛ばさなくちゃあならねえ……」と、例の丸男がその時だけやけに神妙に告げてきたのが逆に戦慄だったボクは、やぶれかぶれ感満載で、手にした鎖鎌を振り回しながら、自分の背丈以上あるその化物に向かっていったわけで。というか、もっとスタンダードな武器あったでしょうが。何かこう、グルグル振り回す方の扱いが非常に難しいから!
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