勇気×人×間×コン×テス×ト

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 この時点で明らかに後手を引いていたものの、迫る灰色のスライムに向け、先手必勝! っとばかりに自分に気合を入れつつ、ボクは鎖鎌の分銅を投げ放ったのであった。  でも、元の世界にいた時からそうだったけど、ボクには度し難い「アンラッキー気質」が備わっていて、大抵のハプニングがさらなる窮地を呼び寄せてしまう、そんなインフェルノな人生を、青春を、今まで送ってきていたわけで。  異世界でもそれは忠実に引き継がれていたようだ。踏み出した左足が「偶然」、スライムの飛び散った残滓を捉えてずるりと滑り、分銅はあらぬ上空へ向けてすっぽ抜けていくと共に、予想外の方向から引っ張られたことで思わず鎌の方もボクの左手から抜けてしまったわけで。  高々と、無駄に虚空に向かって小さくなっていく唯一の得物を目で追う間もなく、勢い付いたボクは真顔の丸腰のままで、目の前に迫る壁のような灰色の軟体ボディに向けてあえなく、つんのめるように突っ込んでいくほかは無かった。 <何とォォォォォッ!? リント選手っ、己の生命線である武器を放り出してしまったぞぉぉぉっ!! ……解説ウガイさん、これは一体?> <……所詮、武器や魔法に頼った勇武などエセ……そう痛烈に批判をしているかのような行動です。非常に興味深いですね>  実況と解説らしきヒトたちの声が響き渡るけど、いや違うってば。 「わあああぁぁぁぁぁぁぁっ!!」  声だけは馬鹿みたいによく通る、と言われるけど、その分、悪目立ちもするいい感じの叫び声を漏らしながら、ボクは眼前に広がった、スライムのものすごく冷たくて、ありえないほど気色悪い、そのゲルとゾルの中間のような感触に包まれていく。  底なし沼のような、五感をまるごとパッケージされるような感覚に、根源的な恐怖を揺さぶられたボクは、口の中にまで入り込んでくるその生臭い餅のような感触を吐き出しながら、声を限りに叫ぶのであった。 【タタタタスケ、タスケテヤスゥゥゥゥゥゥァァァァァァァッッッッ】  その時、奇跡が起こった。
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