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そんなこんなで初戦を何とか勝ち抜いたボクだったけど、その後もやはり幸運神のご加護を受けているとしか思えない試合が続いたわけで。
次のスケルトン戦では、またも襲われる恐怖に反応して飛び出た「叫び声」が、敵の骨格の「繋ぎ部分」らしきところの魔力的接着をバラして、あっさりとKO勝利した。
そしてその後も、オークや、ミニドラゴンや、アーマーナイトでさえ、ボクの放つ謎の「音波」攻撃にあらがう術を持っていない、という無双状態にあって常に敵を屠るというスタイルで、次々と勝ち進んでいくのであった。
うん、まあおよそ「勇者」の立ち振る舞いでは無いけどね! だいたい毎回がとこ、すっころんでは、敵に肉薄され、それによって絞り出される恐怖の叫び声で、何とか形勢逆転をするといった展開であるわけで、意外性もそろそろ無くなってきたような黄金なるワンパターンがこうまで続くと、観客のみなさん……ひいては「評価者」の方々に飽きられ始めるんじゃないの? という恐怖の方が強まってきているわけだけど。
この世界の人たちには、それが新鮮に映るらしい。
自ら望んで窮地を呼び込み(あくまで不可抗力なんだけど)、それを緻密に練られた(完全に偶然)策で打ち破る。それを「勇気」と評していただけているようで。しかしそれがいつ破綻するかは分からないわけで。
次は決勝だ。何でも最後は途轍もないクラスの魔物を召喚するとか言ってた。今度こそヤバそうな雰囲気を感じ取ったボクは、丸男に棄権の意をほのめかしてみるものの、
「リントちゃぁ~ん、次勝てば、五年は遊んでくらせるだけのカネだぜ~? いけるいける、今のお前さんなら簡単なことよぉ」
聞く耳持たなかった。そしてどうもこの男にだけはボクの本質的なものが見抜かれているらしく、逆らったら例の店に売り飛ばされそうな恐怖をその目の座ったでかい凶悪な面に感じ取ってしまい、ボクはそれ以上何も言えなくなるわけで。
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