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伝票を持ってレジに進むパパを、黙って追いかけた。
パパの後ろ姿。猫背で、格好悪い。白髪が増えてる。靴はすり減ってぺたんこ。靴下、ほつれてる。どこからどう見てもダサい。ダサい、ダサい、ダサい。
でもね、あたし、本当はパパのこと──
「さぁ、ちえみ」
振り向いたパパは笑顔だった。
あたしたちは、並んで歩いて外に出た。山に落ちる寸前の夕日が、あたしたちを照らす。逆光で、パパの表情がわからない。
「さよならだな」
パパは右に、あたしは左に行く。神様は、あたしたちにそういう運命を与えたんだ。
いつか本当の「さようなら」が来るのだろうか。来るとしたら、それはいつだろう。
あたしが結婚した時? それとも、パパが結婚した時? そしてパパの子が生まれた時?
まだわからないけれど、その日が来るまではこう言わせて欲しい。
あたしは右手をピンと上に挙げ、大きく手を振った。
「またね、パパ!」
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